じゃがいもを収穫した時に、包丁で皮をむくのも大変だろうと思われるほど小さなものがとれます。
試しにこのサイズのいもを数個、種いもにしてみたところ、50コほどのじゃがいもが収穫できました。
じゃがいもは買ってきた種いもからしかできないものと思いこんでいたので、かなり得をした気分です。
食用にすらならないほどの小さなものから50コ収穫できるのなら、家庭菜園としてはバンバンザイなのではないでしょうか。
しかし、時期になればホームセンターには種いもが所せましと並べられています。
収穫した一部を翌年の種いもにするということは、世の主流ではないように思われますが、これはなぜなのでしょうか。
種馬鈴しょ検査合格証明証
売られている種いもには、検査合格証明書がついています。
日本いも類研究会のHPには、種いも検査について次のように記載されています。
…植物防疫法に基づいて植付前の元だね(種いもの親)、栽培中の植物体、生産物(種いもそのもの)の3段階で、植物防疫官が厳密な検査を行っています。
この検査に合格したものでなければ種いもとしては販売できないのです。
そして、検査に合格したものには「種馬鈴しょ検査合格証」が添付され、出荷されることになります。
日本いも類研究会 種いもの世界
Ⅹ 種いもの世界 | じゃがいもMiNi白書 | 日本いも類研究会
種いもは、ずいぶんと手をかけられて流通していることがわかります。
検査をする理由
では、なぜ種いもは検査を行っているのでしょうか。
農林水産省の資料に次のように書かれています。
検疫の意味と歴史
栄養繁殖する馬鈴しょは、生産用の種苗として塊茎を用います。
この場合、受粉によりできる真性種子に比べ増殖率が低いという欠点があります。
また、ウイルス病や輪腐病といった病害は、種いもに罹病していると薬剤による消毒が極めて困難であり、要害のない種いもを使うことが唯一有効な防除方法となります。
このように、種馬齢しょの病害虫が生産に及ぼす影響は大きいものになります。
特にウイルス病は、ジャガイモ葉巻ウイルスの場合、軽症株で65%、重症株で92%の減収をもたらすとされています。
このため、病気が無い健全な馬齢しょを確保して、馬齢しょを介しての病害虫のまん延を防ぐことを目的に種馬齢しょ検疫を行っています。
農林水産省 横浜植物防疫所
もしも病気の種いもを使っていて、病気が周りに広がってしまうと、食い止めることが難しく、じゃがいものような国民食が減収となれば影響の大きさははかりしれないということでしょうか。
収穫したものを翌年の種いもにしていいのか
病気が発生したときのリスクを考えれば、農家の人が「正しい」種いもを購入するのはわかります。
では、家庭菜園で楽しむ場合はどうすればいいのでしょうか。
いつくかの資料から関係のありそうなところを拾ってみました。
- じゃがいもは、植物防疫法の指定種苗の対象となっているため、同一県内で自家栽培に利用するために増殖する場合を除いて、植物防疫官による検査を受けなければなりません。
日本いも類研究会
- 「種いも半作」と言われるように、種いもの良し悪しは、いも収穫量や品質などに大きな影響を及ぼします。
安心して栽培できる「種馬齢しょ検査合格票」が交付されている種いもを使いましょう。
- 馬齢しょは病害虫に対して非常に弱い作物です。
特に、ウイルス病に罹ると有効な防除手段はなく、被害の拡大を招きます。
- そのため、種馬齢しょは「植物防疫法」により、種いもの検査が義務づけられており、種いもは100%更新するということが、馬齢しょ栽培の原則となります。
日本特産農作物種苗協会 種いも更新の重要性
①つまり、家庭菜園で使う分には収穫したいもを種いもにしてもよい。
②ただし、そのいもを他県に持ち出して栽培してはいけません。
③ただし、もしウイルス病が発生すると、自分の畑だけではなく、周りの畑や地域にも(甚大な)迷惑をかけますよ。
種いもを買わずにじゃがいもが収穫できてラッキー!とばかり言ってもいられないようです。
まとめ
病気の有無は素人では判断できませんが、優良な種いもの条件の1つに、「形態的条件」というものがありました。
大きさが適度であり規格内(40~190g)の大きさで、粒ぞろいが良いこと。
(日本いも類研究会)
今年の収穫いもを来年の種いもにするとしたら、せめてこの規格にあう最も立派なものを種いもに回してみようかと思いました。
ただ、病害虫のまん延防止のため「種いもは100%更新が原則」と言われると、収穫したいもを使い続けるのは心配です。
たとえば、3年に1度は「正規」の種いもを買おうかどうしようか、家庭菜園がゆえに迷ってしまいます。