特別支援学級に在籍する知的しょうがいのある子どもたちと一緒に、漢字の書き取りをしました。
横について見ていると、ほとんど「書き順」どおりではなく、驚くような位置から線をひいています。
基本的な書き順にそわない書きかたを見ていると、これまで気にしていなかった「書き順」について考えさせられました。
こんなふうに書いている
たとえば、「草」という字。
画数は9で、書き順は次のとおりです。
1画目
2画目
3画目
4画目
5画目
6画目
7画目
8画目
9画目
それをこんな順番で書いています。
1画目
?
2画目
!
3画目
!!
4画目
この「口」の部分は3画あるのですが、ぐるぐるっと▢(四角)を1筆書きです。
5画目
6画目
7画目
最後のたて棒は、下から上に書いていました。
書き順の意味
「書き順」と逆行する子どもたちの書き方をみていると、書き順には、大きく2つの基本があるのだなと気づきました。
〇左から右へ
〇上から下へ
学習指導要領には「筆順に従って文字を正しく書く」とあります。
また、平成28年3月に文部科学省において作成された「学校教育における漢字指導の在り方について」という資料の中では次のように記されています。
文部科学省としては、引き続き、児童生徒が、標準的な字体による漢字習得を通じて、生涯にわたる漢字学習の基礎を培うとともに、将来の社会生活における円滑な漢字運用の能力を身に付けていくことができるように、取り組んでまいりたいと思います。
平成28年3月10日参議院文教科学委員会 参考資料
つまり、漢字学習の目的は、正しい書き順で書くということではなく、書くべきところで書く(読むべきところで読む)ことができればいいということになるのではないでしょうか。
書き順を無視することのデメリット
では、どんな書き順であろうと、最後にその字が書けていればいいのでしょうか。
この子どもたちの書き取りをみていると、部首というかたまりをほとんど意識していないように思えます。
たとえば、「草」と「花」。
この2つの漢字のうち、草かんむりの部分は共通しています。
つまり、「草かんむり」という「かたまり(部首)」を覚えてしまえば、次に出てくる草かんむりの漢字は、まるっきり新しい漢字ではなく、覚える部分が少なくてすみます。
逆に、草かんむりという部首をかたまりとして認識していないと、新しく学習する漢字はどれもまったく違う漢字になってしまい、覚えていくのに大きな負荷がかかることになります。
この子どもたちは、漢字は部首という共通項からなっているという認識ができていないため、書き取りは1字1字、絵を写し取るがごとくなのです。
漢字はまさしく象形文字として認識されているかのようで、漢字をおぼえていくということは苦難の道のりです。
教え方
部首をかたまりとして覚えていくために、正しい書き順というものが必要なのかもしれません。
書き・読みができるようになり、さらに、読みやすいきれいな字を書くためにも、書き順は理にかなっているように思います。
それにしても、小学校の高学年の子どもに、今から書き順について指摘していくのは難しいです。
指摘するところだらけで、本人のモチベーションを下げてしまうからです。
書き取りに苦戦する様子をみながら、どの部分を改善すれば楽に漢字を覚えていかれるかな~と横目でみつつ、いい方策が浮かびまん。
では、1年生のうちからしっかり書き順をとおもい書き順の間違いを指摘すると、「これでいいんだよ。」「おばあちゃんがこれでいいって。」などなど。
ドリルにはカラー刷りで、書き順の番号が示されています。
その部分を指しながら、「2(画目)は、ここ!」と、こちらも負けてはいられません。
通常級の子どもと同じペースですすまなくても、大人があきらめずに繰り返し教えることで、正しい書き順に慣れてくる子どももいます。